その甘い笑顔に落とされるオトコは何人いるのだろう、と少し不謹慎な興味に惹かれる。
問題はそこではないと、重々承知の上で。
「わかってないなぁ。私の仕事は指示出しとレギュラー陣を応援することなんだよ。そんな地味で身体の汚れる仕事は私の担当じゃないってワケ」
そう自慢げに言うと、レギュラー陣七人分のスポーツドリンクをその白く折れそうな両手に持ち、残りの部員の分が乗った台車を岩浪春花サンに押させる。
「零さないように運びなよ」と、きつく念を押しながら。
良く見ればタオルも持っていて。
その要領の良さには少し驚かされた。
数分後、猫なで声の可愛らしい声がコートの方から聞こえてきた。
どうやらいつも通りの部活に戻ったようである。
相変わらず忙しい此処では沈黙が続いたが、あちらの状況に安堵したのか、ふと隣にいた木ノ下サンと目があった。
すると、よそよそしくも警戒を怠らない彼女が話しかけてきた。
「本当に、夢の楓原綾さんなんですよね?夢ではないんですよね?」
身長差のせいか、下から見上げるように話される。