忍足侑士のジャージの裾を引っ張って、可愛らしく心配をする、藍場加奈。
部員は皆、彼女の言葉を聞いて私を哀れみの目で見てくる。


「残念ながら違うわね、藍場サン?それに、何を教えられたって?アナタも」


忍足侑士を見詰めて話す。


「現状って何?此処で何が起こっているか、私は知らない。当然でしょう?“転校生”だもの。何を勘違いしているのかしら?」


「じゃあ何を“壊し”に来たんだ?」


「雰囲気をよ?榊太郎に教えてもらったの。最近ピリピリしているから、和ませてほしいって。新しいマネが入ったら気分転換になるって言われたの。で、一体何と勘違いしているのかしら?」


宍戸亮も、忍足侑士も、やられたという顔をしている。


それはそうだ。
明らかな挑発。
それに軽々しく乗ってしまった馬鹿な自分達。
気付けば掘り込めない程度の防波堤。


私を甘く見ているからこうなるのだ。


「ちっ。いつも通り練習を始める。それぞれウォームアップからしっかりしろ!解散!!」


これ以上コトを進めないための賢明な判断だ。
跡部景吾という人間は頭の回転が速くて面白い。



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