そう。
その瞳はきっと、挑戦者のようにギラギラと鈍く光っているのであろう。
「氷帝学園の一年生であること。女の子であること。テニス部のマネージャーであること。そして、泣いていること。それしか知らないわ。君は……いいえ、君達は木ノ下サンの何を知っているの?」
「鳳、引け」
切れ長の流し目しかしない青の瞳が、肉食獣のように鋭くなる。
「おい、お前は何をしに来たんだ?」
私は軽く舌打ちをしたくなった。
折角、鳳長太郎を挑発出来たと思ったのに。
──流石、部長、か。
跡部景吾は誰よりも早く展開を察し、私に言葉を突きつける。
「私は“壊し”に来たのよ」
「“救う”違うん?木ノ下を。“天使”さん?」
「違うわね」
怪しく笑う私に、忍足侑士はなおも喰らい付いてきた。
「どう違うん?明らかに此処の現状を知っていて、木ノ下側に付くようにしか見えんのやけど?」
「私は誰の味方でもない。私は誰かを救うために来たんじゃないもの」
「もしかして、木ノ下さんに何か嘘を教えられたんじゃないの?ねぇ、侑士。綾、何か勘違いしているんじゃないかな?」