「よろしく」
そっけなく返事をし、軽く手を握ると少し不安そうに握り返してきた。
大変申し訳ないとは思うが私の思考回路内に彼女──岩浪春花はいない。
何故なら私の獲物は──
「私は藍場加奈」
──こっち、なのだから。
「同じ三年生だよ。綾って呼んでも良い?」
私よりは小柄な子。
明るく、元気なオンナノコ。
それに楽しそうにこちらを品定めする瞳。
榊太郎から聞いた元凶となっているはずの生徒。
さっきとは打って変わって優しく微笑むと、差し出してきた手を瞳に映し、無視した。
周りがざわつく。
彼女も突然のことに対応出来ていないようだ。
「えっ?」
「その気がないなら、嘘でも言わなくて結構よ。別に私はお飯事をしに来たワケじゃないわ」
“何言って”と誰かが話そうとした時だった。
後ろから声がかかる。
「て、天使様!?」
振り向けば、そこにいたのは夢の中で出会った少女、木ノ下サン。
「木ノ下!?なんでお前が此処に来るんだよ?しかも天使様ってなんのことだ?」
向日岳人を無視して、私に駆け寄る小さな少女。