さぁ、怖がらずにスタートボタンを押してみて。
少し芥川クンに意地悪をしてしまった。
後悔はしていないが、中学生相手に大人気なかったかもしれない。
溜息を吐いて無駄に広いテニスコートまで行けば、テニスの知識など正直体育の授業レベルの私にも、此処、氷帝学園のコート整備レベルの高さが理解出来た。
客席ではなくコートの中へ入っていくと、そこには既に集合している部員達が。
レギュラー陣は勿論、男子テニス部員二百人の目が一斉にこちらを向く。
──圧巻だ。
「誰だ、お前?」
「今は部活中ですよ?」
ぼんやりとその光景を見ていた私に疑問を抱いたのであろう。
声を掛けてきたのは、宍戸亮と鳳長太郎だった。
怖い者知らずの二人に思わず口角が上がってしまう。
その私を見たのか、よく見れば、芥川クンが隅の方で微かに怯えていた。
私は二人に向き直る。
「榊太郎から聞いてないの?」
「今、その話をしていた所だ」
部員達の前に立っていた榊太郎は私を見るなり苦笑した。