「ハヅキ様」


するりと滑らかな頬を白手越しに感じる。
幼く震える無知な少女をねっとりと堕とすように。


だが指はぴたりとそこで止まった。
ノボリが息を呑む。
白手が、湿り気を含んだから。


「っ、めんなさっ」


──しまった!
そう思うには遅すぎた。
感情のままにハヅキを犯し、手中に納めようとしたのだから。


固まるノボリの耳に「ごめんなさい」と連呼される言葉が冷たく響く。
どんな言葉よりも反応よりも刺を持って。


「……ハヅキ様、す「ごめんなさいっ!」


一際強く言葉がトレイン内に響いた。
それに驚いて一歩引いたノボリの身体から逃げるように扉と座席の間に移動すると、ハヅキは頭を下げる。
ぽたりぽたりと涙が床に落ちていった。


「私、い、嫌な子なんですっ」


「……あの、」


「ノボリさんが、カミツレさんと話しているの、見て、嫌だって、思っちゃって……だからもっ」




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