と、同時にノボリの心中はじわりじわりと優越感に浸り始める。
男性との接触が極めて少なかったハヅキの感情も経験も、色々な“初めて”を手に入れているのだから。
そして今、まさに自らの手で、行動で彼女の全てを支配しているという仄暗い感情が沸き上がっていた。


「ハヅキ様」


扉のガラス越しに写るノボリの表情は冷徹で、しかしその中にあからさまに欲を含んでいる。
しかし、そんな表情をハヅキが読み取れるはずもなく彼女は恐怖に怯え、しかし、縋るように助けを請うていた。


ノボリしかこの場を助けてくれる人がいないことも、理解していたから。


「ハヅキ様」


首にピリッと刺激を受ける。
「ひゃっ」と小さな声が上がり、いやいやと身体を小さく動かす姿はノボリの欲を更に煽った。


このまま手に入れてしまいたい、と。


普段理性で一歩引いていた感情が止まらない。
お互いの年齢差に、ハヅキの男性経験の無さに、無理をしてはいけないと、本気になってはいけないと歯止めをかけていたのに。
トウヤを見て微笑んでいたあの顔がノボリの頭を離れないのだ。
自分だけが特別に得られるものだと思っていたそれを、いとも簡単に他人に奪われたから。




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