呆然と立ち尽くすハヅキ の瞳には戦闘不能というには酷すぎる状態のハーデリアが。
床に倒れて全く動かない。
綺麗な茶色の毛並みには赤い斑点が混じっている。
「ハーデリ……ッ!?」
大切なパートナーに駆け寄ろうとしたハヅキの手首をノボリの白手が掴んだ。
驚いて見上げると、にやりと笑うノボリ。
空いた片手が彼女の首筋をなぞり頬を包み込む。
「ふふっ、可哀想なハヅキ様。私に勝てず、大切だと気付いたハーデリアは倒れ駆け寄ることも出来ないのでございます」
「離してくださいっ!早くしないとハーデリアがっ!!」
片手を封じられただけなのに全く動かない身体。
力を入れられたのとは違うモノがハヅキの身体をねっとりと包み込むようだ。
まるで“にらみつける”や“かげふみ”といった技を受けたポケモンのように。
トレイン内に響くくすくすというノボリの声。
にっこりと口角の上がった唇。
真っ直ぐに見詰める汚れた灰色の瞳。
ぞくりと背筋に悪寒が走り一歩足が引けた時だった。