「起きましたか、ナマエ?」
「……セバスチャンさん」
部屋の壁には一面拷問道具が設備されている。
使い方など、聞くのも躊躇われそうな物まで、これでもかと。
その部屋の中央。
明らかに場違いなセミダブルのベッドの中、白い綺麗なシーツに包まれた幼い少女が声に反応した。
「食事の時間ですよ」
少女を──ナマエをベッドから優しく抱き起こし、自らの足の上に横抱きにして座らせる。
少女の陽に焼けていない白い肌が、セバスチャンの燕尾服にやけに映えた。
「さ、口を開けて」
セバスチャンの言うことを素直に聞いて口を開ける、ナマエ。
そのピンク色の小さな口に、小さく切り分けたフレンチトーストをフォークで与えれば、慣れたようにぱくりと口に含む。
母鳥がそうするような、ゆっくりと与えられる食事だ。
「これ、美味しいです!」
もぐもぐと口を動かして、ごくりと一切れを飲み込むとナマエはセバスチャンの顔を見上げて微笑んだ。
何でも大抵は「美味しい」と言って食べるナマエだが、今回は本当に気に入ったらしい。
抑え切れないのか、足がパタパタと動いている。