「陛下!?下がって!!」


その声に反応したコンラートが素早く、有利の前に立つ。
リーヴェもそれを確認すると、大シマロンの密偵に向かってクナイのようなものを投げた。


一瞬のことだった。
有利の目の前で、それはスローモーションのように流れる。


時代劇のように、はたまた映画のように。
コンラートの背中越しに見えた見知らぬ男は、マリオネットが糸を切られたごとく、その場に崩れ落ちた。


「お手を煩わせて申し訳ありませんでした。折角の休息の時間をお邪魔してしまったようですね」


「いや、構わない。それより……」


リーヴェは平然と、死体と化した男を担ぐ。
それに平然と対応するコンラート。
それが、さも当たり前の日常のように行われ、有利の頭を離れない。


「はい。探していた者です。直に処分いたしますので、問題はありません」


一礼すると、その場を去ろうとした。


しかし、有利にはそうはいかなかった。


「待ってくれ」


リーヴェは有利の指示に従うように、その場に立ち止まる。
少しだけ、その無表情から驚きの表情が生まれた。


「はい、陛下」



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