(卑猥な表現を含みます)
あの時の俺は何も考えていなかったんだ。
ヨザックが立ち去ると、コンラートはその場にドサリと音をたてて座り込んだ。
身体を壁に預け、高い天井を見上げる。
蝋燭に燈された火も、もう消されており、執務室に差し込むのは蒼い月明かりのみ。
それがまた、この場の重苦しい雰囲気と重なり、何故か笑えた。
片膝を曲げ、おでこを当てると、瞳を伏せ、自らを嘲笑うように当時を思い出す。
──あの時の俺は本当に、本当に何も考えていなかった。
終戦後間もなく、コンラートは地球に行くことになった。
二つ返事で承諾したこの任務。
誰かに伝えたつもりもない。
しかし、その事実をどうやってか聞きつけたリーヴェは、この機会を逃さないために、必死になって彼を探していた。
今回を逃せば、もう二度と取り返しの付かないことになるような予感がしたから。
「隊長!」
夜の闇が辺りを包み込む中、城下から少し離れた丘の上で一人、木の下に座り込むコンラートの元に駆けつける。
切れる息を整え、チラリとも見ない彼に不安を感じながらも、伝えるべきことを伝えるために。