先程まで有利がいたはずの噴水を、呆然と見詰める。
リーヴェにとって、有利がスタツアをした瞬間に立ち会うのは初めての体験だ。


「全く、あのヘナチョコめ」


ヴォルフラムの文句が、確かについ先程まで有利がそこにいたことを示していた。


ダンスパーティーのあの後、有利とヴォルフラムを背後から狙っていた予定外の刺客と彼等の間にリーヴェが盾になるように入り、事なきを得た。
結果から言えば、確かにアーダルベルトの報告書通りたいした腕利きではなく、問題はなかったかもしれない。
しかし、それは結果論だ。


実行犯もコンラートとヨザックによって泳がされ、結果的にアジト共々崩壊させたことは、さすがルッテンベルクの獅子とその元部下。
捕虜を数名残したところも、拍手ものである。


「リーヴェ」


優しく穏やかな人の良い顔で笑顔を送るコンラートに、自然と笑顔が零れた。
心からの表情は何年振りだろう。


その顔に二人の男が赤面したのは言うまでもない。


「リーヴェはしばらくこちらに残るのか?」


ヴォルフラムの表情が曇る。
前回の任務から今回の任務と、あまり時間を許して話すことが難しかった、今回。
血盟城内まで入る許可を与えられた数少ない友人に、リーヴェは苦笑することしか出来なかった。



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