リーヴェは大人しく相手の言う通り立ち上がり、彼等の集まっているテーブルまで足を進めた。
抵抗しなかったのは。
結局、今抵抗をしても意味を成さない事を理解しているから。
エモノを持たぬリーヴェに、今彼等を殺る事は出来ない。
「何故だ?」
「聞かれると思ったよ」
「まぁ、座れ」と席を勧められる。
直ぐに動けるよう、軽く腰掛けるだけにして男達に視線を合わせた。
右隣りに座る男の左腰に、男のエモノがあるのを確認してから。
「あんたが殺ったのは、まぁアレだ。オレ達の上司で所謂純粋な大シマロン兵」
“純粋な”
その単語を聞いてもリーヴェは特にこれといった反応を示さない。
彼等のような者は昔から存在していたから。
別段珍しい訳ではないのだ。
人間に付く魔族なんて。
それは逆もまたしかり。
リーヴェにとって彼等が魔族だろうが人間だろうが、そこはたいした問題ではない。
仕事内容としては、誰が相手でも関係ないのだから。
要は魔王陛下に危害をなさなければ何でも良いということ。
「同情はしない。けれど貶したり批判したりもしない」
「十分だ」