ムッとした表情をしていたらしい。
遠くで「だから、ぼくやお前には話さなかったのだろう?」とヴォルフラムが意見していた。
彼は本当に第一印象とは掛け離れるくらい、大人になった。
昔は──
そこまで考えて、有利はフッと思わず息を零した。
昔はヴォルフラムは我が儘プーで。
誰もがそう思うほど子供だった。
へなちょこ、へなちょこ、と直ぐに言って。
周りを困らせてばかり。
けれど、今は違う。
彼は少しずつ大人になっているのだ。
──なら、おれも。
おれも少しはまた進化したへなちょこでいるかな?
だって決めたんだ。
「分かった」
──おれがサインを出さなきゃ。
ゲームは進まないんだから。
「ヨザック、お前に頼む。リーヴェを探して欲しい」
ぴくりと動いたオレンジの髪。
何時だって彼も変わらない。
賢い獣は己の上司に気付かれないように、軽く笑って見せた。
「おれの命令だ。行ってくれるな?」
そしてその顔は嬉しそうに微笑む。
魔王様の命令を待っていたように。
「確かに拝命つかまつります“ユーリ陛下”」