残されたのはコンラートと有利の二人。
有利は心配そうにコンラートを見上げた。


「なぁ、おれ間違ったこと言ってないよな?」


まだ若干震えたままの声。


「はい」


「コンラッドも人を殺すことを罪だと思わないのか?」


「いいえ、罪だと思いますよ」


「だよな!?」


少し笑顔がこぼれた有利に対して、コンラートは少し控えめに、しかし、少し悲しそうに答えた。


「しかし、その罪さえも国のために被らなければいけない者もいます。ユーリ、この国のために、自らの手を汚す者がいるようにですよ」


「……」


「そして、感情がある以上、どんな者でも、誰かを傷付ければ辛い思いをします。それをひたむきに隠すことは並大抵の精神ではありません」


分かっている。
コンラートは有利がそれを知っていてなお、その考えが嫌だと、純粋に思うことの出来る魔王陛下なのだと知っている。
だからこそ、有利に伝えることを忘れない。
何かを変えるためには、現状をしっかり把握しなければいけないことを。


「おれ、女の子を殴ったんだ。……最低だよな」


「そこは後で謝れば良いんじゃないかな?」


ふっと息が抜けて、爽やかに、いつもの笑顔のコンラートがそこにいた。





憤怒
(“永久平和主義国”希望だから)



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