しかし、その力と勢いに呑まれるほど、リーヴェは可愛らしい軍人ではなかった。


全く同様を見せず、感情のない顔で振り向く。


「まだ何か?」


拒絶の冷たい言葉がコンラートの心を刺した。


「俺は君に注意したいのではなくて──」


「私の問題です」


驚いて顔を合わせたコンラートが見たものは、真っ直ぐで真剣な表情と瞳の女性だった。
しかし、その紳士な瞳に光は全く存在しない。


コンラートは背中にゾクリと悪寒を感じた。


「フォンウィンコット卿のことならば私自身の問題です。グリエ・ヨザックにも言いましたが、そのことで誰かが気に病むことはありません。では、今度こそ行きます」


有無を言わさない強い言葉に、コンラートは反射的に腕を離してしまう。
リーヴェは気にもしない様子で廊下を歩いて行った。


残されたコンラートは一人、深く呼吸をすると壁に身体を預け、項垂れながら溜息を吐く。


「何故──」


「隊長は知らないんだろ」


「何をだ、ヨザ?」


何時からいたのか。
何処から話を聞いていたのか。
それさえも考えたくないくらい、ヨザックは冷たい瞳でコンラートを見ていた。



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