フォンウィンコット卿スザナ・ジュリアの向かった戦場の噂が流れたのは、思えば歴史的アルノルド戦の直前。
激戦寸前であった。


──あそこは墜ちるだろう。


その噂が流れるか流れないかの時点で、私は若き獅子──当時の主であるウェラー卿コンラートに呼び出された。


何となく予想はついている。
彼にとってスザナ・ジュリアという魔族の女性が特別であることを認識していたから。
それがどのような特別であれ、彼女に危険が及ぶとなれば、彼はいくらでも命を差し出すに違いない。


だから、何時でも戦場へと向かえるように武装し、覚悟を決めて前へと出たのだ。


「お呼びでしょうか」


「“彼女”の下へ頼みたい」


手短に伝えられた内容に頷く。
“言われなくとも”。
そうお互いに認識がされたことだけ確認すると、私はその足で馬に乗りアルノルドを後にした。


本当は獅子の下で振るいたい力。
本当は幼なじみと共に勝ち抜きたい戦線。


けれど、獅子が私を信じて彼女の下へと決断したのだ。
私が出来る事は、その気持ちに答える事。
そしてそれが求められた指令なのならば。



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