今でも鮮明に蘇る。
紅い記憶。
戦場アルノルド。
国境が真近に見えるその場所で。私達は全てをかけた。
「俺に付いて来い!」
そう叫んだ我等が若き獅子に、誰もが全てを預けることに躊躇いなどなかった。
「俺達は眞魔国の兵士だ!」
その一言を自信持って言うために。
これから生きていくのであろう幼き同胞のために。
私達が出来る事はきっと今此処にあるから。
誰もが不安で、誰もが確証がなかった。
戦死率が最も高いと言われるこのアルノルドで、生きて帰れる保障など有りはしないのだから。
だが。
誰も負ける気などない。
誰も死を怖がりなどしない。
私達の名誉と誇りにかけて、此処は絶対に守り抜く。
それが私達の全てだった。
隣に立つオレンジ色の髪をした同胞と、目を合わせる。
この目を離せばお互いに戦士として戦うのだ。
男も女も、ましてや幼なじみ等関係なく。
「勝つわよ」
その言葉に、彼は柄にもなく優しくふっと笑って私の手を取った。
「あぁ、オレ達のためにな」
そしてお互いに目線を若き獅子へと向ける。
それが魔族と人間の混血に生まれた私達の冷たく厳しい、生きた時代。