「判断を下すのは、フォンヴォルテール卿ですから」
「なら、ぼくが兄上に頼んでみる。それならば良いだろう?」
その希望が通る事は先ず難しいだろう。
分かっていても、自らの存在を望んでくれたことが嬉しい。
小さな声で「ありがとう」と告げれば、幼い閣下は頬を染めて笑った。
「陛下にお会いしたら、どうぞ御礼を伝えて下さい」
こんなに唐突に帰省するとは知らず、つい告げることを忘れていた。
誰よりも強く気高いのに、誰よりも庶民的な魔王陛下に。
彼がいなければ、きっと溝を埋めることは出来なかったから。
「自分で伝えるべきだろう?リーヴェの声で、ね」
何時還るか分からない仕事。
何時その命が亡き者に変わるか想定出来ない任務。
けれど、陛下のために還れと言われたのだ。
それは、任務ではなく有利との“約束”のように。
「そうですね」そう呟いたリーヴェの肩にヨザックが腕を回して笑った。
「陛下はグリ江のだからね」と上手過ぎるウインクと共に。後日(望んだ未来の)
(そんな日々)