その怒りを露わにした態度に、コンラートは一瞥する。
「お前もだろう、アーダルベルト。何時までジュリアを追うつもりだ?」
その答えに行き詰まるとアーダルベルトは大人しくコンラートを離した。
事実、だから。
──だが。
「次会った時、リーヴェがあのままだったら、有無を言わさず連れて行く」
「彼女が望まなくとも?」
その質問に、アーダルベルトは楽しそうに答えた。
「あぁ。もう随分考慮したからな」
そしてコンラートの耳元で小さく何か伝えると、草むらの奥に隠しておいた馬に乗り、視線だけでコンラートに笑いかけて。
その場を後にした。
アーダルベルトは想う。
助けたかったんだ、と。
“あの時”まだコンラートを信じていたリーヴェの真っ直ぐな瞳を信じた。
ジュリアとは違う未来を迎えたリーヴェの、先が光に満ちているのを祈って。
手放した。
けれど、何十年振りかに再会した彼女は、あと一瞬でも遅ければ闇に堕ちるところまで来ていた。
悪化していたとは微塵も想像していなかったのだ。
──これが最後だ。
リーヴェを信じるのも、自身が我慢するのも。
そして、コンラートに全てを託すのも。
「お前にしか、アイツは救えねぇぞ」
アーダルベルトの声がコンラートの耳に残った。
期待
(まだ変われる未来を)
(信じようじゃないか)