「ねぇ、“私”が望みを叶えてあげようか?」
少女はふわりと甘く笑った。
その手に似合わない、不釣り合いな今の私の剣を持って。
「“ゲイン・リーヴェ”は死の番人だもの」
少女の剣の先が私の喉に触れる。
ヒヤリとした剣先。
何度この獲物で同胞の命を奪ったのだろう?
何度紅い世界を見ただろう?
“仕事”と割り切って。
“それが最善策”だと言い聞かせて。
此処で斬られれば何かが変わるのだろうか?
この剣に命を渡せば、来世は明るいのだろうか?
私はほぼ無意識に、少女の前に膝をつき頭を垂れる。
それが一番殺りやすいと知っているから。
そうすれば、私の心は実に穏やかになった。
すとんと、心の稼が落ちるように。
──そうだ。
私は何時も願っていたではないか?
こうなることを。
誰かが“私を殺してくれる”ことを。
空気で剣が振り上げられるのが分かる。
──今度は、誰も傷付けない仕事につきたいな。
そんなことを悠長に考えて、私は──
「リーヴェ!?」
突如、聞こえた声に思わず顔を上げてしまい。
私の目の前にいた少女は、笑って、
剣は花びらになって空を舞った。過去(全ての始まり)