男二人は無理矢理リーヴェの腕を引き、テントの外へ、引きずり出す。
「貴方達が彼女を殺したのね」
淡々とした感情の無い声。
「ああ、そうだ。その相手に犯されるなんて、アンタも運がないな」
「そうね。全くもって幸運だったわ」
瞬間。
たった一瞬のことだった。
それで全てが決まったのである。
奇しくも同刻、アルノルドでも終戦を迎える。
リーヴェはそのことを知らず、無い体力を振り絞って、馬を走らせた。
そして彼女が着く直前。
白鳩便によってジュリアの死を伝えられたコンラートは一人、深い闇に囚われたのであった。
「忘れたいわけじゃない」
あまりに懐かしい記憶。
ここ数十年、蓋をしていたことだ。
忘れたいわけじゃない。
けれど、決して思い出したくはない、そんな記憶。
「そうね。だって“私”はそんなこと望んでないもの」
にっこりと、まるで賢者様のような優しい表情をした少女。
考えれば簡単なことだ。
少女は私。
私の意識ならば“私”の望みを知っていて当然。