「そうだな……」


少し考えて、牧はノートを自分の方に向けると、最後の式から数行空けて文字を連ねていく。
男子にしては綺麗な、読みやすい文字が。


“A.以上の情報収集から、結城葉月は   が   である。”


ノートをまた葉月側に回して、こつりとシャープペンシルで指し「穴埋めなら出来るだろ?」と言った。
ほのかに笑みを浮かべた顔で。


それを知ってか知らずか、数学を解いた表情と変わらない顔で、真面目に解答していく。


“A.以上の情報収集から、結城葉月は 牧紳一 が   である。”


“好”と記入したところで、葉月の視界が真っ暗になった。
と、同時に唇に暖かい何かが触れた。


ちゅっ、と小さく甘い音がして“あぁ、キスされたんだ”なんて他人事のように事実が流れていく。


「満点は、とれそうか?」


「……なんとか、頑張れば」


ふっと笑った牧に、合わせて葉月にも笑みが零れた。


が、次の瞬間、教室のクラスメイトがいる中で、思わずキスをしてしまった事実に対して二人して頬を染めるが。
幸か不幸か、誰もそれを視界に入れた人はいなかった。


ノートの続きには、問題の解答が──





恋する数式論
(牧紳一が天然である)
(……は?)




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