和やかな昼休みは、始終弁当の話で過ぎていった。
約一名の、心中など知らずに。
「……弁当、作るのか?」
「え?」
五時間目。
何の因果か席替えで隣になった流川が、珍しく体育の授業でもないのに起きていた。
……黒板は、全く見ていなかったが。
「どあほうが言ってた」
「お兄ちゃんが?うん、毎日作ってるけど」
先生に聞こえないよう、葉月は小声で真剣に返す。
けれど、口元はにやけていた。
普段、花道が弁当についての感想をくれないため、こうして誰かを介してでも意見を貰えることが嬉しいのだ。
それがたとえマイナス意見でも。
けれど、流川の口ぶりからするにどうやら弁当は好評らしい。
嬉しくて仕方なくて、にやけが止まらなかった。
「……作れ」
「流川君の分も?……それなら、お弁当箱買いに行かなきゃいけないなあ」
葉月は、少し考えてそう答えた。
何せ花道と違い、流川がどれくらい食べるのかとか、嫌いな食べ物などを知らないのだから。
「明日、弁当箱持って来る」
「本当?それは助かります」