たとえ晴子の手料理だとしても花道と弁当を交換するなど、絶対ありえないが。
「桜木のもさ、お袋さんの手料理だろ?美味しそうじゃないか」
花道の弁当箱に詰められたオカズを指して、小暮がフォローを入れる。
大食漢の花道仕様のそれは、確かに成長期の男の子用だと言わんばかりの大きな弁当箱で、中身も唐揚げや海老フライなどの揚げ物中心。
けれど、さりげなく添えてある芋サラダや煮物、フルーツが栄養と彩りをカバーしていた。
「む。褒めてもアゲナイぞ、メガネ君」
ハハハと笑う花道を見て、和やかになった空気に安心する。
が、またしても爆弾は花道から投下された。
「これは葉月の手料理だからな」
「ブフー!!」
「ぬ?」
その花道の一言に、周りで我関せずを決め込んでいた多くの部員がむせ返る。
その目は“マジかよ”という、尊敬と嫉妬に満ちていた。
マネージャーの彩子は勿論、バスケ部の応援に来る晴子と葉月も、実は密かに部員に人気がある。
しかも赤木同様、花道も葉月の“目の上のたんこぶ”だと言われているのだが。
……当然、本人が知る由もない。