──だが総悟に惚れないのは当たり前だ。
自惚れかもしれないが、結城は、俺に、惚れているんだから。
「流石の俺でも万事屋の旦那には勝てねぇか」
「なんだとー!?」
しまった。
あまりの急展開カミングアウトに襖をぶち壊す勢いで俺、登場。
それを見た結城はやっぱり全速力で逃走していった。
残されたのは軽蔑の眼差しで俺を見る総悟と、手のやり場を無くした俺。
「……アンタ、学習って言葉を知らねぇのかィ?」
「…………悪い」
そう答えると、先程まで結城が座っていたそこに、腰を下ろす。
コイツと隣合わせで座る等滅多にあることではない。
だが。
ハァーと総悟が溜息をつけば俺も負けないくらいの溜息をついちまう。
少し、総悟の顔を盗み見するとそれに気付いたのか、あからさまに嫌な顔をされた。
「何なんですかィ。アンタに見られても気持ちわりィだけですぜ」
「──なぁ、相手が万事屋だってのは本当なのか?」
その時の総悟の顔はありえなかった。
もう一生見れないだろう。
純粋に驚いているが、どこか打算的な黒い笑み。
「……悪い。忘れてくれ」