「土方副長が好きになった人って、きっととても素敵な人だったんでしょうね」


丸い瞳が少し開かれる。


私が知らないと思っていたのかな?
土方副長の好きな人。
──沖田隊長のお姉さんのミツバさん。


「まさか色恋沙汰で入隊するたァ驚きでィ。しかも相手は土方さんとは……」


そっちかよ。
軽く反発したくなった。


「的外れですよ。そんな可愛らしい理由ではありません」


「じゃあ一体何なんでィ?」


「……何なんでしょうね?」


色恋沙汰なんて可愛らしい理由ではない。
それは事実だ。
でも土方副長が気になることも事実で。















数年前、私は田舎で農民をしていた。
こんな世の中だがわりと平和な村で、争い事もなく過ごしていて。


でも、そこに攘夷を掲げる人達がやってきて、紛争になった。
荒れ狂う火の海を鎮圧したのは真選組。


『誰かー……誰か助けて!!』


崩れ落ちた木造の家の下敷きになってしまった私が、どれだけ叫んでも誰も気付いてくれなくて。
木造の家は燃えきり背中には火傷。
立ち込める煙と涙と叫び声で喉はカラカラ、声は掠れていた。



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