結局、引いても引かなくても、この男が敵である限り勝ち目など始めからあるはずもないのだから。


──ならば。



葉月は自身の獲物であるタガーナイフを両手に構える。


戦闘警戒体制を取ると、無意識に口角が上がるのが自身でも分かった。
それが死と赤屍からごまかした恐怖から来るものだと理解しつつ。


「そう。悪いけれど、先を通して貰います」


音一つ立てず、スニーカーを地面から離し。
“死神”Dr.ジャッカルの首へ獲物を突き付けた。















「全く」


赤屍は不意に出た言葉とは真逆に、帽子を直すとクスリと吐息を零した。
足元に倒れる女性は、意識さえないものの、正常に呼吸をしている。


──実に興味深い。


自身を見て絶望するならまだしも“彼女”は闘争本能を剥き出しにしてきた。
勝てるはずがないということを理解していない輩とは違い、きちんと理解しているような戦い方からも、何故そのような選択をしたのか。


真相は分からないが、興味だけはやたらとそそられる。


赤屍は彼女と、彼女の依頼品をもう一度確認し軽々持ち上げると、黒に染まった誰を助ける事もない病院を後にした。





闘志の奥で
揺らめく恐怖
(興味の矛先は、彼女の瞳に孕んだ本当の気持ち)

お題拝借:SNSサイト 様




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