誰もが当然の如くそう思った。
今は血生臭い服で行くのが嫌だとか、そういう問題ではない。


「帰りもきちんと家まで送りますよ」


その優しい言葉とは真逆に、手に持たれているメスに力が篭る。


と。


「っ!!」


ヒュッと音がしたと思ったら、蛮の顔をメスが掠めた。
彼の顔から血が垂れる。


「蛮く……」


「いかがでしょう?ご都合は合いそうですか?」


間を詰めて聞かれ、頭が働かない。
しかし、自分がここでYesと答えなければ待っているのは友人の……。


「は、はい!是非行かせていただきます!!」


赤屍がニコリと笑った。


「良い返事がいただけて安心しました。では、私に捕まってください」


葉月は言われるままに赤屍の肩に手を回す。
赤屍は優しく壊れ物を扱うように葉月を横抱きにし、悔しそうな蛮と銀次を一瞥すると。


「では、また。依頼品“も”いただきますね」


そう言い残し、震える葉月を満足そうに見つめて、一瞬でその場を後にした。


「あぁ!?依頼……クソ屍ッ!!」


「葉月ちゃん」


後には、仕事も友人も奪われた悲惨な男達が取り残され。


哀れな子羊は完全に……完全に、紅い悪魔に捕まったのであった。





路地裏にて
(そこは運命の交差地点)



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