少し恨めしげにハヅキはユーリとスマイルを見て、だが、諦めたように、盛大に溜息をついて、リビングを後にしようとした。
「そんなに悪戯されたいのなら考えてやってもいい」
ハヅキはユーリの言葉に“えっ?”と疑問を浮かべた。
「だってお菓子あるよ?」
ハロウィンのマナーとしては……今更だから省略するとして、とにかく“TRICK or TREAT”と聞かれたら、お菓子を差し出して悪戯を避けるというものである。
それを“悪戯”限定に決め付けるのは如何なものか。
ハロウィンをするつもりだった為、きちんとお菓子を用意して(しかも手作りで)いるにも関わらず。
「ヒヒッ。ハヅキは相変わらず可愛いねぇ」
スマイルとユーリはお互いに目配せをすると、あからさまに“何かを企んでいます”という顔をした。
「本物のオバケがお菓子だけで食い下がると思うの?」
「本当の悪戯と恐怖を味わせてやろうか?」
その二人の意味深な言い回しに言葉が詰まる。
だが相手はこれ幸いに話を進めようとして…。
「「どうする?」」
ハヅキは顔を青ざめると、返事をする間もなく割り当てられた部屋へ全力で走って行った。