「いや……猫による」


スネイプの足が止まり、前を向けば既に地下牢教室に着いていた。
英国紳士よろしく、教室の奥にある私室の扉を開け、両手が荷物で塞がっている葉月を先に部屋に通す。
陰険根暗教師でもエスコートという言葉は知っていた事実に少し面白くなって微笑んでしまいそうだ。
だが、それならば少しくらい荷物を持ってくれても良いのにとも思う。


それから指示された通り、空いていた机にドサッと資料を置いた。


「教授、これでよろしいで──」


「日本では、猫は寝子──つまり、a prostitute(娼婦)を表す言葉でもあるのだろう?」


「はっ!?」


何でそんな古い表現を知っているのか、確認しようと振り向けば想像以上に近い位置にスネイプの顔があった。
スネイプは、驚き慌てる葉月を見詰め、彼より小さい身体に覆い被さるように手を伸ばし、机と自身の身体で葉月から逃げ場をなくした。


そうして目的の獲物を罠に嵌めた捕食者はこれ以上ないくらい、妖艶に微笑み、ねっとりとした口調で甘く毒を吐く。


「我輩に飼われてみないかね?」


と。



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