綺麗な黒真珠のような瞳が夕焼けの色を含む。
頬に温かい手の温度が伝わると、そこで初めて彼女の顔が意外と近い位置にあることに気が付いた。
「ハヅキ!?あのっ!?」
ハヅキの手から一週間前と同じ問題が書かれた紙が落ちた。
「いい加減落ちてくれない?」
はっきりと強い口調で言われる。
台詞こそ傲慢だったけれど、僕の頭にはそんなことより……。
「私、気が長い方じゃないのよ。それでも一週間待ったわ。ううん、実際はもう何年も待った」
「あの……」
「まさか、私が偶然此処で聞いたとでも思ってるの?こんな“誰も来ない教室”で?」
僕はその言葉の真意に気付き、ビクリと身体を震わせた。
僕の身長より低いハヅキは必然的に上目使いになっていて、それは彼女の強い瞳を更に際立たせている。
「リーマス?私、馬鹿じゃないわ。仮にもレイブンクロー生なの。勉強は得意よ?」
「だったら何でこんなことっ」
「私、貴方を幸せにする自信があるわ」
「っ!?」
「私、貴方に“襲われない”自信があるわ。ねぇ、だから……」