「彼女の身に起きた現象は極めて特異です。時間と時空を渡るなど人間に可能なのでしょうか」
「実際に起こった事象に関して疑惑を持つなど、マクゴナガル先生らしくない」
生徒にそうするように、穏やかに窘められて彼女は自身の失言にようやく気付いた。
コホン、と咳を入れて紅茶に口をつける。
ダンブルドアの、言葉の続きを聞くために。
だが、マクゴナガルがその言葉の真意を知る事はさらに困難になった。
「歴史は白紙に戻された」
「なんですって?」
そう、彼が付け加えたから。
ダンブルドアは考える。
「私はスネイプ先生に幸せになってもらいたいんです!」
そう、強く宣言した異世界の少女。
目を見張る程真っ直ぐに、迷いなく紡がれた言葉に、思わず口角が上がるのを抑えられなかった。
少女が、葉月が起こしたトリップという現象について疑問を持つ事は決して間違いではない。
しかし、起こった現象に関して疑惑を持つことは可笑しい。
既に“起こった”のであるから。