息を吐き、上手く呼吸を整える。
空を見上げれば、あれほど降っていた雨も止んでおり、不気味さを演出していた森は陽の光を浴びて、寧ろ、水滴から描いた虹色が温かい世界を創っていた。
平静を取り戻す我輩をちらりと見て、あの自信に満ちた笑顔を向けられた。
彼女を待っていた訳ではない。
彼女を望んでいた訳でもない。
だが。
「相変わらずね。でも、傷が深いからおとなしくして」
手慣れたユウキの治療。
それを安心と感じたのか、意思とは裏腹に身体はおとなしく言うことを聞いた。
“本当に危なかったんだから”
そう、ぼそりとユウキが呟いたが、気付かぬふりを決めた。
誰が、生命の危機に愛する女以外の夢を見るのか。
それこそ、何か“魔法”をかけない限り。
風に靡く黒髪は相変わらず自身のそれとは違って見えて。
黒真珠のような瞳は真っ直ぐに我輩を見詰める。
先程の夢のように。
久しく会わなかった学友達が、再会を果たした結果は、はたして……。呼ぶ声(それはあまりにも優しく響いて)