風に靡いて漆黒の髪が宙を舞う。
同じ黒の髪なのに、ユウキの髪は何故か自身とは全く違う物のように見えた。
「良いでしょ。私の勝手だもの」
何と言う言い分だろう。
だが、ユウキに文句を言っても仕方がない事を僕は十分に理解している。
何時もそうなのだ、この女は。
誰が何と言おうとも自身の考えを曲げたりしない。
そのくせ素直に間違いを認めたりするのだから、尚更質が悪い。
“当然でしょ”とでも言いたげにに眩しいくらいの笑顔を向けられ、僕は溜息をつくしか出来ないのだ。
「どんな夢を見ていたの?」
「何だって?」
「夢よ。ゆ・め!随分とうなされていたのよ?」
そう言われてみれば、そうだ。
真夏でもあるまいし、寝汗をかくなどありえない。
何か、そう、嫌な夢でも見ない限りは。
僕は少し頭痛の残る、頭の片隅に残っているはずの記憶を探る。
どんな夢を見ていたのだろうか。
驚いた事に何一つ思い出せない。
何も記憶を掠めない。
……いや、その前に。
その前に何故僕はこんな場所で寝ていたのだろうか。
今は何時だ?
授業は?
何を考えていたんだ?