そう。
まさか、バレンタイン・デーに好きな人にチョコレートを送る習慣が日本だけの変わった習慣であることなど、葉月は知る由もないし考えもしなかったのである。


知らぬ事とはいえ、過ぎた事は仕方がない。
が、まさか、本命チョコのためにダンブルドア校長に我儘を言って、厨房の場所を聞き、屋敷しもべ達と一緒に一ヶ月もチョコレート作りを練習したことも、可愛いレターセットを買って、一晩かけてラブレターを書いた事も、当日どうしても渡せなくて梟に頼んで、密かに届けてもらった事も、今となっては誰にも言えないし、寧ろ消し去りたい過去であった。


そして極めつけが葉月の本命チョコの相手。


セブルス・スネイプ。


ホグワーツで彼の名前を知らない生徒などいるはずがないだろう。
陰険根暗自寮贔屓の彼は、ホグワーツ魔法魔術学校全校生徒の不満と恐怖と拒絶を思いのままに手にしていたのだから。


しかし、葉月にとってはこれ以上ないくらいの理想的な男性で、チョコレートを渡してしまうくらい本気だったのだ。


ところが日本とイギリスの習慣の違いに玉砕した葉月は今や、彼からの返事よりも、寧ろ、彼の嫌いなグリフィンドール生である自身に、何時減点が下されるか、それだけが不安と心配だった。



TOP


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -