風が二人の間を流れる。















ファントムハイヴ家のガーデンは手入れが行き届いていて、実に美しい。


季節の花が咲き誇り、風が花びらを散らす。
風流な人ならば、思わず詩の一つでも口ずさんでしまいそうだ。
そうでなくとも、常人の美的感覚さえあれば、感嘆の溜息を零してしまうに違いない。


ガーデンにはティータイムも楽しめるよう、テーブルセットもしっかりとされている。


しかし、今、寛ぎと安らぎを演出するはずのガーデンは、本来のコンセプトそっちのけで異様な雰囲気を放っていた。


テーブルを囲んでいるのは、この屋敷の主であるシエル・ファントムハイヴの、あくまで執事であるセバスチャン・ミカエリスと、これまたシエル・ファントムハイヴの専属家庭教師である葉月の二人。


何時もの笑顔を崩さないセバスチャンとは対象的に、葉月の瞳は上手く定まらなく、あちらこちらをせわしなく動いていた。
態度も同様で。
慣れたように優雅に長い足で、テーブルの横に立つセバスチャンに対し、椅子に座るも背中を丸め、今にも消えてしまいそうに震えている葉月。



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