耳元に聴こえる声に洗脳されるように、少女は口を開く。


「……ハヅキ」


「ハヅキ、貴女は天使とではなく、私と一緒に行きましょうね?」


青年は自らが羽織る黒いコートの中に少女を優しく誘導し、抱き上げると、陽の光に照らされた教会から足を遠ざけた。


その直後、音を立てて崩れた教会など、見向きもせずに。















「遅いぞ、セバスチャン。何処へ行っていた?」


「申し訳ありません。少々“荷物”が増えてしまい遅くなりました」


田舎屋敷(マナーハウス)に戻ると、珍しく屋敷の主であるシエル・ファントムハイヴが屋敷の玄関口の階段で本を読みながら出迎えた。
機嫌が悪そうに見える所を考えると、アフタヌーン・ティーだけではオヤツが足りなかったらしい。


「お前が“命令”を守れないほどの“荷物”だと?」


その言葉に、青年──セバスチャン・ミカエリスは苦笑する。


「コレを運んでおりました」



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