皆の輪に入って屋敷を目指す葉月の手を、ふいにセバスチャンが引っ張った。
「きゃっ」と可愛い声が聞こえると、視界は一瞬で真っ暗になる。
考える必要もない。
セバスチャンに抱きしめられていたのだ。


「あ、あの!?」


慌てて離れようと手に力を入れるが、背中と頭に回された手はピクリとも動かない。
代わりに聞こえたのは、耳元に直接響く、クスッという彼の微笑だけ。


ゾクリと背筋が粟立つ。


「教えてください」


その、必要以上に熱っぽく厭らしい声に。


「……“まだ”何を伝えていないのですか?」


吐息を含む声を、流し込めば面白いくらいにぴくぴくと反応する葉月の身体。
小刻みに震え、多分、真っ赤な顔をしているに違いない。


──相変わらず、可愛らしい。
たかだか事件があった数時間離れていただけなのに。
その何時もと同じ反応に、堪らず煽られる。


欲を少し堪能した所で、セバスチャンがゆっくりと身体を離すと、


「!?」


真っ赤な顔に、黒真珠の瞳が涙で揺れていた。



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