葉月からすれば。
留学生だった葉月の地位はお姫様なんて言えるような部類ではなくて。
異国の世間知らずのただの子供で。
お姫様なんて夢のまた夢だった。


ファントムハイヴに採用が決まったと聞かされた時は。
まるで物語のお姫様より幸せだと思った。


同時にその感謝とお礼をどう伝えれば良いか悩んだ。
持っている物も、買える物も、与えられたそれには程遠く。
何も出来ない自身に嫌気がさして。


だから自身に唯一出来る、認められた語学の能力を。
その全てをファントムハイヴのためにと誓った。


惜しむような物ではない。
誰に誓うわけではない。


ただ、認めてくれたファントムハイヴのために。


葉月はまるで中世の淑女がそうしたように、シエルの前に跪くとスカートの裾をきちんと持ち上げて。
服従の姿勢を示した。


「私の全てをファントムハイヴのために」


シエルもセバスチャンも葉月も笑った。


それが、答えだから。





英國ロマン
(最高の童話の出来上がり?)

お題拝借:Romantic Wars 様




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