深夜を回る前。
マナーハウスまで帰宅した二人を待っていたのは、パーティーで話題になった家庭教師だった。


「暖かい紅茶が入っていますよ」なんて、気の利いた事をして。
だからジャパニーズは人気が出るのだと、思わず二人は苦笑する。


だからか。
シエルはふとこの家庭教師に意地悪をしたくなった。


「ハヅキ、こちらの童話には詳しいか?」


「……?少しですが。王子様とお姫様が幸せになる話とか」


「どう思う?お前なら“王子様”に見初められて幸せになりたいか?」


その質問に反応したのはセバスチャンで。
今日の貴族の事を言っているのだと瞬時に理解する。


確かに彼女の幸せは彼女が決める事だ。
結婚も、葉月が承諾するならば有り得る。


ぱちくりと黒真珠の瞳を動かして。
シエルの意図を探ろうとしているのか。
だが、葉月は二人の予想を裏切って花の様に鮮やかに笑ってみせた。


「私はもう王子様に見初められましたから、これ以上は望みません」


「何だと?」


「私はファントムハイヴに選ばれたんです。私はファントムハイヴの物です」



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