「お久しぶりです、ファントムハイヴ伯爵。実は貴方の知人の話をしていた所なのですよ」


「Ms.ユウキの事です」


葉月の名が出ると、シエルは内心で舌打ちした。
その一言で男の用件を理解出来たから。


「彼女が何か貴公に失礼をしましたか?」


「とんでもない!実は先日参加したパーティーで彼女を拝見しまして──」


あぁ、とシエルもセバスチャンも納得がいった。
数日前に参加したパーティーに、確かに葉月を連れて行ったのだ。


公の場に殆ど出ない家庭教師が、いかに異国のパーティーを乗り切るか興味を持ち。
罰ゲームと称してパーティーに参加させた。
特別に誂えた淡い朱色のドレスは彼女の黒髪に良く映え、確かに中々の見映えで。


和装には勝てないが、そうして壁の花と化していた家庭教師を見ていた異性は多かったのだ。


──だからその日は、セバスチャンの機嫌が最悪だったが。


シエルは思わずフッと息を零す。
ピクリとセバスチャンの眉が上がった。


「あぁ、すみません。実は彼女は──」
















「お帰りなさい。坊ちゃん、セバスチャンさん」



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