礼儀である一礼をすれば、このアジトのボスであるアズーロ・ヴェネルは、銃口を彼に向けたまま信じられない物を見るように、冷や汗を流した。


「は……は。驚いたな、あれだけの人数、一人でヤッちまうなんて。参ったね」


アジトにいた数多くの部下を一人でのしたのであろう執事へ、恐怖を極力見せないように口角を上げてはいるが、冷や汗は止まらない。
セバスチャンに驚きの賞賛を喋るヴェネルの傍ら、彼の上げた紅茶色の瞳に写ったのは、連れ去られた二人。


彼の主は後ろを向いているため、よくは分からないが縛られて動きを封じられている所をみると、多分意識がないのだろう。
それはシエルだけではない。


一瞬、視線がヴェネルの後ろに倒れて気絶しているシエルの更に奥、こちらを向いて主と同様に気絶している家庭教師である葉月に向けられた。
そして。
常に不敵な笑顔を浮かべていたその表情の瞳が、冷たく光る。




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