アーダルベルトほど、愛に一途ではなかった。
ユーリやヴォルフラムほど真っ直ぐではなかった。
ギュンターのように暴走することも、母上のように振り撒くこともなかった。


誰かを蹴落としてまで欲しいと強く望んだのは、ジュリア以来かもしれない。
最も、ジュリアをそう思ったのが愛からかは何とも言えないが。


手に力を入れて、間違ってもエモノを持たないよう理性で抑える。
自身が本気を出せばヨザックを“殺す”ことは簡単だと理解して。


目の前の幼なじみであるヨザックを殺害し、リーヴェを自分だけの籠に閉じ込めることが出来たなら。
俺だけをその瞳に写し、俺だけのために声を発し、俺だけのために生きたなら。


仄暗い願望が鎌首を出して来た時、リーヴェの声が聞こえた。


「ウェラー卿!」


手を軽く挙げて微笑む彼女に、危険な思考を一気に押し込める。
ヨザックも楽しそうに「やぁん、コンラート閣下ぁ!」なんて手を振ってきて。


「お疲れ様」


手を挙げて答える俺は、きちんと笑えていただろうか。
二人の戦友に。






この恋が
恋であるうちに、
(全てを手に入れたい)

お題拝借:たとえば僕が 様




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