「ヨザック、アニシナさんは良いの?」
先程まで正面に座っていた有利君は、コンラッドの“キャッチボールしませんか?”というデートの申し込みに簡単に飛び付いた。
ヴォルフラム風に言えば尻軽。
有利君風に言えばフットワークが軽い。
その空席のイスに、狙ったかのように座ったヨザックに。
目もくれずに聞く。
中庭ではとうとうグウェンダルが捕獲されたようだ。
嬉々として研究室へ向かう赤毛のアニシナ。
表情までは見えないが、多分恐ろしいくらいに笑顔だろう。
せっかくなので大好きなアニシナとお話しすれば、と提案したつもりだった。
が、ふと見たヨザックの顔がニヤけていたので直ぐに伸ばした手を止める。
彼の内心など、直ぐに理解した。
どうせ、
「姫さん、嫉妬、ですか?」
だろう。
思った通りの返事に、少し後悔した。
面倒臭いのだ、この男は。
「……もう、いい」
顔を反らそうとしたが、グイッと顎を捕まれる。
視線まで捕らえられるとそこに写るのは、自身をどういたぶり、愛で、食べ尽くそうかという欲求に忠実な一匹の獣。
「可愛い。……なあ、もっとして。例えば、過去のオンナとか」