──その時。
カツンと高い音が響いた。
丁度、葉月の部屋の前。
葉月の履いていたガラスの靴が片方、足から抜けたのだ。
それは、葉月が我が儘を言って特注で作らせた、異国のお姫様が履く特別な靴。
王子様とお姫様を再び引き合わせる、大切なキー・アイテム。
月の光を浴びて、まるでそこだけスポットライトを浴びている靴に、コンラートは一瞥すると。
「“王子様”、ね」
ボソッとそうつぶやき、躊躇いなくガラスの靴を踏んで割った。
ブーツの下で割れたガラスの靴。
もう、それは直しがきかないほどに粉々に砕け散ってしまった。
コンラートは、それにフッと笑みを零すと。
何事もなかったかのように、葉月の部屋へと消えていった。
月しか知らない、真実を残して。ガラスの靴は砕けた(俺だけのお姫様へ)
お題拝借:森blog より