珍しくダンスパーティーに参加したと思ったら、お姫様は体力の限界と、未成年なのに飲酒をしてしまったせいで、もう既に夢の中。
コンラートは一人、そんな葉月を横抱きにして血盟城の廊下を歩いていた。
コツリコツリとブーツの音が、無音の廊下に響く。
人の気配もしないそこの光は、窓からの月明かりだけで、まるで今、この世の中に二人だけしか存在しないようだ。
まぁ、その内の一人は眠っているのだが。
今頃パーティー会場では、グリ江ちゃんが有利の護衛をして、二人でハメを外しているかもしれない。
グウェンダルかギュンターあたりが発狂して、ヴォルフラムが嫉妬の炎を燃やしているかもしれない。
どちらも仮定の話だが、コンラートは何となくその場が想像出来て、クスリと笑った。
「う……ん」
彼の腕の中で、愛しい恋人が小さな声を上げる。
コンラートの僅かな振動が伝わったのか。
それとも葉月以外の人を思ったことを察したのか。
どちらにしても、彼の心は満たされていた。
この時、この瞬間は、彼女は彼だけのお姫様なのだから。