ヨザックは過保護過ぎる血盟城の仲間を想像し、思わず笑ってしまった。
彼等からすれば、葉月と二人で城外に出るなど切腹ものだろう。
けれど、今日は特別。
なにせ姫君直々のご指名だから。
「早く一人で乗れるようになりたいな」
黒い髪が風に靡く。
遠くを見る瞳は、まるで何処かへ消えてしまうのではないかと思えるほど、儚げだ。
「それまたなんで?」
不安になり思わず口に出してから、ヨザックは後悔した。
あまりにも言葉が震えていたから。
葉月もそれに気付いたらしい。
振り向いた顔は少し驚いていて、けれど直ぐに悪戯っ子みたくニヤリと笑った。
「何時でも血盟城を抜け出せるからだよ」
楽しそうに話す葉月。
きっとそれを彼等が聞いたら噴火モノだけど。
今は彼等はいないから。
「だってこんなに良いお天気なのに、お城の中なんて勿体ない」
「ね?」と首を傾げれば、とてもお姫様の意見とは思えない内容も、思わず全て許してしまいそうだ。