──頭が、思考が混乱する。
よく分からない。
けれど。
間違ってはいけない事実があるから。
聞かなければいけない一番重要な事があるから。


私はぎゅっと手に戻らない力を必死に入れて。
コンラッドから伸ばされた、抱きたいという意志を、ぱちんと跳ね退けた。


甘い、関係は此処まで。


今度は彼が呆然とする番だ。


「いっぱい、聞きたい事があったの。でも、もう大丈夫」


真っ直ぐコンラッドを見る瞳に、どうか力が入っていますように。
不安を悟られませんように。


「コ……ウェラー卿、貴方は私達の陛下を裏切ったの?」


これだけ知れば、もう躊躇わないから。
どうか、真実を貴方の口から教えて?


大切なのは、私達の関係でも。
貴方が私をどう思っているかでも。
私の意志でもない。


だって私は眞魔国の魔族で。
貴方は大シマロンの使者。
服装が、痛い程物語っているのだから。


「彼を陛下と呼ばないよう、約束しましたよ」


その言葉が全てだ。


コンラッドから伸ばされて、優しく頬を撫でる手を力任せに跳ね退ける。
もう、彼は私の恋人ではないのだ。
私の、想い人になってしまったから。



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