カタンと鳴ったヒールの音に、ひどくゆっくりと私の方に振り向くコンラッド。
銀の光彩の光る瞳が柔らかく細められ、柔らかい薄茶の髪が動きに合わせて靡く。
白の装飾の少ないジャケットの下は、何故か素肌だったが、卑しくなど全くない。
最後に会った時と何ら変わりない、優しい表情に思わず抱き着きたくなった。
だけれど──
「ハヅキ」
何気なく呼ばれた名前に、ピタリと足を止めた。
優しい、優しい声と表情。
変わらない態度。
だけれど明らかに違う、瞳の光彩に含まれた貪欲な黒い“何か”。
ゾクリと背筋が震える。
そんな私の態度に、何を感じたのかコンラッドは自ら足を進めてきた。
だけど。
彼が足を踏み出す度、自身の足も同様に下がっていく。
しかし、直ぐに決着は着いた。
「もう逃げられませんよ」
壁が、行く手を塞いだから。
気付いた時にはコンラッドの両腕の中に閉じ込められていて、久しぶりに見た顔に呆然としていれば、私の腰を片手で引き寄せると、もう片手を後頭部に添えて、躊躇いなく唇を奪った。
──奪われた。